欅材といえば箪笥や大黒柱など大型の用材を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、指物(さしもの)や挽物(ひきもの)といった伝統木工芸の技法によって、欅はまた別の表情を見せてくれます。今回は欅を用いた工芸品と、それを支える職人の技についてご紹介します。
■ 指物に見る欅の技
指物とは、金釘を使わず、木と木を組み手やほぞで組み合わせて作る木工芸です。起源は平安時代の宮廷文化にまでさかのぼるといわれ、室町時代には専門の指物師が生まれました。江戸時代に入ると町人文化の発展とともに一般家庭にも広がり、特に江戸指物は、木目の美しさをそのまま生かし、組み手や継ぎ手を外から見せない簡素で堅牢なつくりが特徴です。欅は硬く粘りがあり、経年で色艶が深まっていく性質から、箪笥や棚などの大型家具に用いる指物材として古くから重用されてきました。見えない部分にこそ技術を注ぐ、職人の心意気が光る分野といえます。
■ 挽物・刳物に見る欅の技
轆轤(ろくろ)で木材を回転させながら刃物で削り出す挽物は、椀や盆、鉢といった丸みを帯びた器物によく用いられる技法です。木塊を彫り抜く刳物、薄板を曲げる曲物とあわせ、いずれも欅の杢目の美しさを立体的に引き出すことができます。長期間乾燥させた欅材を挽物で仕上げ、拭き漆で仕上げた盛器などは、文化財として評価される作品も存在するほどです。滑らかな曲線と欅特有の艶やかな木目が調和し、思わず手に取りたくなる質感を生み出します。
■ 職人が語る、欅を扱う難しさと魅力
欅は反りや暴れが出やすい木材として知られ、指物や挽物に仕立てるには十分な乾燥期間と、木の性質を見極める経験が欠かせません。中には解体現場で見つかった百年ものの古材を譲り受け、フォトフレームなどの小さな工芸品として蘇らせる取り組みも見られます。扱いにくさゆえに職人の技術と経験がそのまま作品の質に表れるからこそ、欅の工芸品は単なる日用品を超えた、評価に値する美術工芸として受け継がれてきたのです。
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