世界に分布する欅(ケヤキ属)の仲間たち

日本で「欅(ケヤキ)」と呼ばれる木は、植物分類上ニレ科ケヤキ属(Zelkova)に属します。実はこのケヤキ属、世界にはわずか六種類しか知られておらず、そのほとんどが希少種です。今回は日本の欅の仲間たちが、世界のどこにどのように分布しているのかをご紹介します。

■ 世界に散らばる六種のケヤキ属

ケヤキ属は東アジアからコーカサス地方、さらには地中海の島々にまで、飛び地のように分布しています。日本の欅(Zelkova serrata)は朝鮮半島や中国東部にも分布し、比較的個体数が多い種ですが、中国原産のケヤキ属(Zelkova sinica、Zelkova schneideriana)、コーカサス地方からイラン北部にかけて自生するコーカサスケヤキ(Zelkova carpinifolia)、ギリシャ・クレタ島の山岳地帯にのみ生育するクレタケヤキ(Zelkova abelicea)、そして1991年にイタリア・シチリア島で発見されたシチリアケヤキ(Zelkova sicula)と続きます。氷河期を生き延びた古い系統の樹木とされ、多くが隔離された環境でひっそりと命をつないでいます。

世界のケヤキ属 比較
種名学名主な分布地域特徴・現況
ケヤキ(日本の欅)Zelkova serrata日本・朝鮮半島・中国東部建築や家具の用材として利用。比較的個体数は多いが準絶滅危惧種
中国系ケヤキZelkova sinica ほか中国内陸部山地に点在。地域的に利用されるが分布は限定的
コーカサスケヤキZelkova carpinifoliaコーカサス地方・イラン北部扇状に広がる巨大な樹冠。庭園や街路の景観木として利用
クレタケヤキZelkova abeliceaギリシャ・クレタ島樹高3〜5m程度の小型種。準絶滅危惧種で分布は山岳部に限定
シチリアケヤキZelkova siculaイタリア・シチリア島1991年に発見された最も新しい種。個体数が極めて少なく絶滅寸前

■ 建築文化に見る、日本の欅の特異性

興味深いのは、同じケヤキ属でありながら、木材としての使われ方が国や地域によって大きく異なる点です。コーカサスケヤキは庭園や街道沿いに植えられ、木陰をつくる景観木として親しまれてきましたが、構造材として建築に用いられることはあまりありません。一方、日本の欅は古くから神社仏閣や豪商家の大黒柱、梁など、建物を支える構造材として重用されてきました。硬く粘りがあり、大径の一枚板が取れる性質が、日本独自の木造建築文化と結びついた結果といえるでしょう。

世界のケヤキ属の多くは生育地が限られ、絶滅が危惧される希少な樹木です。そう考えると、日本各地で欅の巨木が大切に守られ、今なお建材や工芸材として活用され続けていること自体が、世界的に見ても稀有な文化といえるのではないでしょうか。

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